例えばこんなものがたり

「くだらない話をしようじゃないか」

とてもそんな雰囲気で話をないのに男はそう切り出した。

 

「まあそう嫌な顔するなよ」

うるさい生まれつきこんな顔だ

 

「昔昔とある王様がいたんだよ。それはとても立派な王様でさ、300年も続いていた戦争を終わらせたんだ」

それがこの国の呪い?

 

「王様は悪魔と契約したんだ」

 

「戦争を終わらす代わりに、その戦争で死ぬはずだった人間の寿命の半分を渡すってね」

「そして戦争は終わった。でもそれが始まりだったんだ」

 

「新しい世代の子供たちが生まれ何年か経った後、若くして死ぬ人が急増したんだ。王様は悪魔に聞いた、これは一体どういうことだ?って、悪魔は悪びれずにこう言ったそうだよ」

 

「戦争で死ぬはずだった人間が新しく作ったガキだって本来なら戦争で死ぬはずの命だろ?その寿命の半分だって俺のものさ」

 

「親が子を産み、子が孫を産み、この国すべての人間に寿命が半分になる契約が行き届くまでそう時間はかからなかった」

「悪魔にとって契約は至高のものさ。いたずらに奪った命よりも契約によって受け取った命の方が純度が高い。半ばインチキの契約だってその例に漏れない。高純度の命を数百年吸ってきたあの悪魔はもはや神の領域に近いんじゃないのかな」

悪魔を殺せば契約がなくなる。

だがそんなことをすれば本来死ぬはずだった魂の欠片は失われ、それを祖とするこの国の人間は皆死ぬことになるぞ?

 

「家畜であることに飽きたんだ」

わかった

 

悪魔を殺すにはうってつけの夜だ